大判例

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東京高等裁判所 昭和41年(行コ)23号 判決

検察審査会は、公訴権の実行に関し民意を反映せしめてその適正を図るために設けられた機関であつて、検察官の不起訴処分に不服のある一定範囲の者は検察審査会にその処分の当否につき審査の申立をすることができ、その申立があるときは検察審査会は右の審査を行なわなければならないものとされている(検察審査会法一条、二条、三〇条)。本件訴は、控訴人の申立によつてなされた本件議決が、検察審査会の職責上要求される十分な調査・取調をした上でなされたものではなく、真犯人は控訴人であるとの予断に立つてなされたものであるから、違法な議決であるとして、その取消しを求めるものである。しかしながら、当裁判所は、そのような事項について審理し判断する権限は裁判所にないので、右の訴は不適法として却下すべきものと考える。以下にその理由を述べる。

(1) 現行法上、刑事事件について起訴すると否とを決定する権限は検察官に専属する(刑訴法二四七条)。もつとも、刑訴法二六二条ないし二六九条はいわゆる準起訴手続を認め、また、検察審査会は、検察官の不起訴処分の当否の審査をすることができるが、右の二つの場合を除いて、他の国家機関が検察官の右権限の行使に干渉し、検察官のなした不起訴処分の当否について審査することは現行法上許されないものと解すべきである。裁判所も、前記の準起訴手続の場合を除いては、その例外ではあり得ず、むしろ、裁判所が起訴された事件につき裁判を行うことを職分とする点にかんがみるときは、一層強い理由により右の干渉・審査を避けるべき立場にあるものといわなければならない。検察官の不起訴処分の当否に関する検察審査会の議決について取消しの訴を認めることは、裁判所が間接的にもせよ検察官の不起訴処分の当否について審査を行なうことに帰するから、そのような訴は裁判所の権限に属しない事項を目的とするものであつて許されないと解すべきである。

(2) もつとも、本件訴は、控訴人が強調するように、被控訴人が控訴人の刑事裁判記録により予断を懐き、検察審査会の職責上要求される十分な調査をしないで本件議決をなした点に違法があるとしてその取消しを求めるものであつて、直接には右議決の内容の当否についての審査を求めるものではないから、前記(1)で判示したことは本件の場合にはあてはまらないようにもみえないではない。しかしながら、検察審査会が不起訴処分の当否に関する審査を行なうに当つて、いかなる方法による、いかなる程度及び範囲の調査をもつて適切且つ十分となすかは、個々の事案の性質・内容によるのであつて、当該不起訴処分の当否自体についての判断の形成と密接不可分の関係にある。従つて、裁判所が、不起訴処分ないしこれに関する審査会の議決の当否自体の問題に立ち入らないで、検察審査会の行なつた調査が十分なものであつたかどうかについて審査を行なうことは、不可能にちかいのである。

(3) また、検察審査会は、公訴権の実行に関し民意を反映せしめてその適正を図るために設けられた機関であつて、一般市民の中からくじで選定した一一人の検察審査員をもつて組織され、独立してその職務を行なうべきものとされている(検察審査会法一条、三条、四条)。検察審査会の右のような性格から考えても、不起訴処分の当否に関する審査を行なうに当り、いかなる方法、程度及び範囲で調査を行なうかは審査会の裁量に委ねられた事項であつて、審査会の行なつた調査が十分なものであつたかどうかの点について審査することは裁判所の権限に属しないものと解するのが相当である。

(三淵 伊藤 村岡)

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